レンガを見る機会が少なくない現代でも、意外に知られていないレンガのこと。
レンガがどこで誕生し、どんな歴史をもっているのか。
また、レンガがどの国で作られ、どのような製造工程を用いられているか。
知られざるレンガのルーツを紐解いてみましょう。
レンガの起源

レンガの建築材料としての歴史は紀元前3500年程前、世界4大文明の時代にまで遡ります。
川沿いに発展した文明、付近には材料となる粘土が豊富にありました。容易に入手、成形できた為、初めは乾燥させただけの日干しレンガを使用しました。より大きな建造物を建てる様になると頑丈な焼成レンガが誕生します。世界中で文明が生まれ広範囲に波及する事で必然的にレンガの生産量は膨大になっていきました。レンガは石材と並び現存する世界最古の建材と言えます。



火災との戦い

レンガ住宅と言えば欧米住宅を思い浮かべる事でしょう。ではどのような普及経緯があったのでしょうか。実は欧米に於いてレンガ住宅が広まった原因は「大火災」によるものでした。時は産業革命時代、様々な文明の発展により人口が爆発的に増えます。当然ながら住居の数も増え、やがて住宅密集地が形成されます。なんとその当時の住宅は木造が主でした。そんな中1666年イギリスのロンドンにて世界の火災史に名を刻む大火災が起きます。「ロンドン大火(The Great Fire of London)」です。密集した木造住宅は次々と延焼しロンドン市内の85%の家屋が焼失したと言われています。この大災害の後、ロンドンでは不燃材である石造またはレンガ造の住宅以外を禁止する法律を制定しました。
同様の事がイタリアやドイツ、またアメリカでも起きます。かくして欧米ではレンガ住宅が急速に増加していきました。



日本レンガ建築

開国以前より交流のあったオランダの指導の下、レンガ建築がスタートしました。本格化したのは明治初期、文明開化の頃です。対象となったのは住宅ではなく製鉄所や造船所と言った火災の起きやすい建物です。つまり日本に於いても延焼を防ぐ事を第一としてレンガが採用されました。その後の西洋ブームも追い風となりレンガ建造物は近代化と高級建造物の象徴となります。しかし1923年の関東大震災によって大きく風向きが変わる事となります。当時のレンガ建造物の多くは耐震性を考慮しておらず、地震により倒壊し、甚大な被害を及ぼします。これを受け法制度が改正され、レンガ造の場合、従来より壁を厚くする事が義務付けられます。材料費の増加、レンガ造に対する不安感、そして鉄筋コンクリート造の普及等の理由によりレンガ建造物は減少していったのです。




レンガの製造工程











  • 広大な採土場からレンガの原料を採掘。
  • 頁岩(けつがん)の塊を砕き骨材に。
  • 同じく原料となる粘土。









  • 頁岩と粘土を混ぜ水と練り合わせた後、形成機により羊羹状に押し出す。
  • ワイヤーにて組積用レンガの大きさに切断。
  • 上げられた後、焼成窯の排熱を利用した乾燥室へ。










  • 乾燥後に窯の中へ(約1,200℃)。
  • 焼きあがったレンガ。同じ釜の中でも色むらができる。
  • レンガをスライスし溝加工。完成。